『母にしてくれて、ありがとう』お産セッション・モニターH様

H・Kさんのお産ストーリー

H・Kさんは、2人の子どもを持つ母だ。 長男は21歳。次女は15歳。 どちらのお産も、「予定通り」なんてことはひとつもなかった。

それでも彼女は今日、穏やかな表情でその話をしてくれた。 「よくやってきたな、って思います。あの頃の自分を、もっと褒めてあげてもいいかなって。」

目次

① 妊娠がわかった日のこと

「産む」と決めるまで、0秒だった。

25歳の夏。 彼氏との間にできた命を、Hさんはためらいなく受け取ることにした。

「母も姉も、中絶の経験があって。だからなんか、すごく印象が良くなくて。私はそれをしないって、もう決めてたんだと思います。できたと分かった瞬間に、産もうと思った。」

自分都合で命を消すことへの違和感。それは彼女の中に、ずっとあった感覚だった。

彼氏にも話した。彼の実家へも、彼1人で話しに行ってもらった。 お父さんは勘当だという気持ちもあったみたい。東京に出てきて、なんのためにこうなったんだと。 でも彼のお母さんは、不妊歴が長い人だった。息子と娘もようやっとできた子たちで——だから、生まれてくることを、心から喜んでくれた。お父さんも「責任持って育てられるのか?」と、最終的に今でも一番可愛がってくれているし、妊娠中もお金の援助をしてくれたりしてます。

「不安はもちろんあったし、うちの親のパートナーシップも姉のパートナーシップも良くない家だから。どうなるんだろうっていう不安しかなかったけど。でも産むって決めたから。」

自分の出自からくる不安と、命を迎える覚悟が、同じ重さで共存していた。

② 妊娠期間、どんな毎日だった?

座っていられないほどのつわり。それでも、誰にも「大変」と言えなかった。

お腹に命が宿ってからしばらくは、ほとんど動けなかった。 バイトも続けられなくなった。朝起きることも、食事をとることも、ままならなかった。

「近所を散歩するのも、ようやっとみたいな感じで。辛いけどお金がないからタクシーとかに乗って病院に行けない、点滴も打てないという状態で、本当につらかった。」

そんな中、彼は就職活動をして、内定を得た。 ——が、1週間で解雇された。

「どっちかっていうと、お金の不安が1番でした。2人ともバイトで、体も動かせなくて。両方の家族から叱られてみたいな感じで。」

それでも、ふたりでなんとかしようとしていた。 義両親から毎月の補助をもらいながら、少しずつ前へ進んでいた。

今のようにネットとかないけど、彼は「たまごクラブ」とかをよく読んで勉強してくれていた。 名前も一緒に考えていたり、具合が悪い日には、ご飯も作ってくれた。

「当時はいい旦那さんというか、できないなりに一生懸命やってたと思う。」

③ 出産の日

「タクシー呼ばないの?」——旦那は歩いてこうって言った。

予定日の頃、高熱が出た。 真夏のことだった。

「脈が上がってるの自分でわかるし、これ陣痛じゃないの?ってなって。おしるしも出て、病院に電話したら”すぐ来てください!”って言われて。」

なのに彼は、「歩いて行こう」と言った。 徒歩20分の道を、陣痛が来ている妻と(笑)

「途中で生まれたらどうしようとか思いながら、一応たどり着いて。そっから分娩室に入ったんですけど、なかなか陣痛が強くならなくって。」

20時間が経過した。 促進剤を使った。 その間も彼はそばにいたけれど、翌朝になって「会社に行ってきます」と出ていった。 事情を話しに行かなければならなかったから。

「しばらくして、ようやっとまた陣痛が戻ってきて。」

結局、22時間超の出産になった。 最終的には帝王切開寸前まで進んだが、赤ちゃんの頭が見えていたため、吸引分娩を選んだ。

「先生が、コーン星人覚悟で吸い出すわ、って。で、吸引で出してくれて。だから頭が、本当にこんな形で出てきて。」

とんがった頭。血まみれと羊水でべちょべちょ。 でも、立ち合いを望んでいた彼は、ちゃんと間に合って横にいた。


④ 初めて我が子を抱いた瞬間

「ハッピーバースデー、歌ったんですよね。気づいたら。」

赤ちゃんを抱いた瞬間、彼女の口から歌が出てきた。 ハッピーバースデーの歌が。

「恥ずかしいんですけど。よく頑張って出てきたね、みたいな。疲れてはいたけど、安心の方があったかな。生きてるわ、みたいな。」

泣いた。ちゃんと泣いた。

「でも医療の知識があるから、あ、こういう状態なんだって冷静な自分もいて。猿みたいな顔してるなとか思いながら(笑)。血だらけだったりグロテスクな部分もちゃんと見てるから、めっちゃ可愛い!ってなるより先に、生きててよかったっていう安堵の方が来た気がします。」

生き物としての感覚と、母としての感覚が、同時にそこにあった。 どちらも、本物だった。


第2子の夜——オレンジのスポットライトと、医師に怒る6歳

次女を産んだのは30歳の冬。 震災の年。世の中が揺れていた時期だった。

陣痛が来たのは夜中の11時。夫はまだ仕事から帰れなかった。 6歳の息子と2人で、タクシーに乗った。

病院に着いてから、たった40分で生まれた。

「血圧がどんどん上がるのが分かってて、赤ちゃんが苦しいのも分かってたから・・・よく機内で産んじゃう話とかあるじゃないですか。本当に私もタクシーの中でなるかもと思って焦った。」

着いてからは、扉の向こうで、6歳の息子は先生たちに怒鳴り散らしていたらしい。 聞いたことない声を出しているから、「うちのママに何やってんだ!」と。

「後から聞いてもう笑っちゃって。叫んだり『痛ぇ!!』って私が言ってたから、先生に何かひどいことされてると思ったみたいで。」

産まれた子が寝かされた部屋に、オレンジ色の光があった。 暗い部屋の中で、スポットライトのように当たっていた暖かい光。

「それが、名前の由来につながった。あの光で、◯◯◯って名前にしたんです。」

⑤ 産後、本当はしんどかったこと

喧嘩のあと、翌朝——母乳がぴたっと止まった。

産後1ヶ月ほどのある夜、夫婦喧嘩になった。

「私、息子を抱っこしてたんですよ。でも揉めた時に、赤ちゃんごと突き飛ばされて。後ろに本棚があったから、私が当たりに行った形で。」

言葉を選びながら、静かに話してくれた。

「私だけだったらいいけど、目の前に誰がいるか知ってんのかって。人として許せなかった。」

そのまま彼は飛び出していった。 夜が明けた翌日、母乳がぴたっと出なくなっていた。

「本当にびっくりした。一生懸命絞り出しても、一滴も出ない。あ、これが噂の精神的に来ると出なくなるってやつかって。」

知識として知っていたことが、自分の体で実際に起きた。

「まあ、出ないものはしょうがない。ミルクは飲んでくれてたし、できることはしたし。でも、やっぱり悔しい気持ちはあったかな。」

だからこそ今、彼女は仕事でこんなことを伝える側になった。 ママの心が、体に直結しているということを。


産後の孤独と、言えない言葉。

「身内には”2人目はまだか”とか、”何食べさせてんだ”とか。姉の昔の育て方論を押し付けられたりとかもあって。男の子だからもっと厳しく育てろって。」

ありがとうと言いながら助けを受け取ることが、なんとなくできなかった。 後から「やってやった」と返ってくる言葉が想像できていたから。

「自分の身内よりも、向こうのお母さんの方に助けてもらったかなって思う。全然違う人たちだったけど、本当に助かった。大喧嘩したこともあったけど、お互い本気で本音でぶつかれて、より絆が深まったかな。」

⑥ あの時の自分と子どもたちへ

「もっと自分を褒めてあげてもよかったんじゃないか、って。」

振り返って、まず出てきた言葉はそれだった。

「痛い思いをしたことって、産んだ後には消えるじゃないですか。でも、そんだけやってきたんだから。よく産みましたよ、って、あの頃の自分に言いたい。」

お兄ちゃんの時は、真夏の高熱で始まった長い長い出産だった。 娘の時は、東日本大震災で世間がざわついていた年に、6歳の息子と夜中のタクシーで向かった。

「1人で頑張ったわけじゃないよね、って振り返れる。離婚したとしても、その時の彼は一生懸命やってたなって思い出せた。今も子どもたちのことを想ってくれてる。離れたけど、感謝してます。」

怒りも、孤独も、乗り越えてきた時間も。 全部、今の彼女につながっている。

子どもたちへ。

「母にしてくれてありがとう、って気持ちが、1番大きい。」

静かに、でも確かな声で、彼女は言った。

「あの子たちがいなければ、お母さんになれなかったから。無事に生まれてきてくれたことは、当たり前じゃないから。よく生きて出てきてくれたね、って。それだけです。」

⑦ これから子育てをするママたちへ

あなたのお産に、意味がないはずがない。

Hさんは今、鍼灸師として働きながら、妊活中の女性のサポートもしている。

「妊活してる人って、パートナーシップが揺れる人も多くて。奥さんだけ病院に行ったり東洋医学を受けに来たり。旦那さんの話は出てこないし、来ることもないけど、本当は二人で受けに来た方が良いよね。体だけじゃなくて、心も、パートナーシップも、全部つながってるから。」

彼女がいつも伝えることがある。

自分の子宮に、ありがとうと言ってください。 自分の体を、大切にしてください。 生理が来ることを、嫌いにならないで。

「ちゃんと活動してくれてることへの感謝から始まらないと、赤ちゃんは子宮にこないと思うんです。まず、自分に感謝することから。」

そしてこれから出産するすべての人へ。

「しんどいこと、誰にも言えないこと、たくさんあると思う。でも、あなたはその経験のど真ん中にいる。それは、絶対に意味がある。」

お産は、きれいじゃなくていい。 予定通りじゃなくていい。 感動できなくても、すぐに可愛いと思えなくても、いい。

あなたが産んだこと。それだけで、もう十分すごい。

「奇跡の連続だな、って。振り返ると、そう思います。」


「あなたのお産聞かせて!」第1号 H・Kさん
聞かせてくださり、ありがとうございました♪

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